第18章~時間の概念(6)

「あのね、最初は、時間って、直線(過去、現在、未来)ではないのかも・・・と思ったの。

 

ヒプノセラピーをやリ始めて、回数を重ねるごとに、とても疑問に思うことがあって・・・」

ああ、それ、覚えてる。

 

ママがある日、こう言ったんだ。

 

「ねえ、エフちゃん、どうしてもわからないことがあるの。

 

ヒプノで幼児期退行とかやるでしょ?

 

そうすると、本人に変化が起きるのは分かるんだけど、その場面に出てきた人も変わるのは、何故かなあ?」って。

 

例えば、ママの知り合いで、幼児期退行を何回もやったTさん。

 

お母さんとの葛藤を長年抱えていた。

 

気性の激しいお母さんから、かなりひどい仕打ちを受けて育ったのだ。

 

大人になった今も、お母さんは、ことあるごとにTさんを呼びつけては、言いたい放題、やりたい放題。

 

Tさんを振り回している。

 

最初の3回くらいは、退行の度に、つらい場面が出てきた。

 

聞いているママの方が思わず涙ぐみそうになるほど。

 

退行でよくやるように、
「お母さんに言いたいことを言ってみましょう」と促しても、
Tさんは
「こんな人、何を言っても駄目よ!」
と、吐き捨てるように言っていた。

 

何を言っても無駄。

 

Tさんはずっとずっと、そうやって我慢して生きてきたのだと思う。

 

つらい場面を見ては感情を解放する、それを繰り返した。

 

そして、4回目か5回目のセッションのとき。

 

この日もつらい場面だったが、ママは思い切ってこう言った。

 

「お母さんはなぜ、そんなことをするのでしょうね。今のあなたにはお母さんの気持ちを感じることができますよ」

 

催眠下では自分以外の人の感情もわかる。

 

と、Tさんが意外なことを言った。

 

「ああ・・・・、この人も寂しかったんだ・・・・」

 

子供はいくつになっても、親のことを「親」という存在で見てしまう。

 

「親なんだから、こうあるべき」
「親のくせに、こんなことをするなんて」

 

このように、「子供である自分」に対する、「親としての態度」にのみ固執しがち。

 

でも、親だってひとりの人間。

 

子供を持った途端に、完璧な人格が備わるわけではない。

 

生い立ちも影響するし、
子供を育てる家庭環境の中においても、悩みや葛藤があることだろう。

 

親にとっても、その人生は常に「学びの場」なのだから。 

 

Tさんはこの日、「親」という枠をはずして、お母さんを見た。 

 

そして・・・・。 
 
次から次へと女性の影がちらつくお父さんに対して、 言いようのない寂しさと苛立ちに襲われているお母さんの気持ちを、初めて「理解」した。 


「不思議なのは、その後なの」